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敬倫塾からの提言

自分の技量を見極める 2010年12月15日号

 これは、私自身の経験から学んだものである。私は小学生までは千種区の千種小学校に通っていた。その小学校で、学校の代表となっていたD君は、勉強もスポーツも得意でリーダーシップも備えていた。また、5、6年生のときに同じクラスだったA君とBさんはいつもクラスで一番、二番の成績で、私はいつも彼らの頭の良さにはかなわないと思っていた。
 小学6年生のとき北区に転居し、大曽根中学に通い、向陽高校に入学した。驚いたことに、D君、A君、Bさんも向陽高校にいた。当時、実力テストで学年30位以内に入ると職員室の横に貼り出されるのだが、その3人の名前は一度も見ることはなかった。私は、1年生のとき、学年で最も成績優秀者のいるクラスの一員だった。クラスは全部で10クラスあったが、このクラスの10人が30番以内に入っていたのである。私は入学当初の成績は中の上であったが、すぐにトップクラスに入ることができた。しかし、猛烈に勉強していたわけではない。1年生の初めから学校の予習・復習以外に、自分の実力を養成するために、コツコツと勉強していただけに過ぎない。私の周囲の多くの高校生は、こういった地道な積み重ねを怠っていた。そのため、多くの者が、中学時代には優秀な成績であったのに、国公立大学に現役合格できなかった。
 私がコツコツと勉強するのは、自分自身の技量をよく知っているからだ。短期間で多くのことを記憶する能力がない。従って、時間をかけて少しずつ覚えていかざるを得ない。分析力が優れているとは言えない。だから、多くの問題を解くことによって問題慣れの状況を作り出し、それらをヒントにして解答を出そうとする。知識は簡単に定着しない。そのため、同じ問題を何回も繰り返して学習する。そうすることにより、以前の不確かな知識を少しずつ確かなものにしていく。一度学習したものでも、時間が経つと答えや解き方を忘れてしまっていることが多い。その不安から逃れるために、繰り返し学習する。私は、このように穴だらけなのである。人と違うのは、それをよく認識しているという点だと思う。
 私は、これまで多くの生徒を指導してきた。自分より優秀な生徒も数多く見てきた。と同時に、自分と同じ様な状況の人もたくさん見てきた。優れた記憶力をもった人、たくさんの問題をこなしていなくても瞬時に分析できる人、短い時間で驚くほどの集中力をもった人。そういった人達の仲間に入れる人は、そのまま、自分の才能を伸ばしていけばよい。しかし、そうでない人達は、私のような愚直とも思える方法で、勉強するのはどうだろうか。
 私は今でも勉強している。それは、いつも生徒からの質問にドキドキしているからだ。答えられないときのみじめな思いを味わいたくないために、日々の学習は欠くことができない。また、教師であるが故に、もっと効率的な学習方法を見つけたいという思いもある。私を支えているのは不安と未完に対する意識ではないだろうか。
敬倫塾塾長 加藤敬志
2010年12月15日号