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敬倫塾からの提言

模擬試験の功罪  2008年10月15日号

 先月、当塾で高校1・2年生を対象に英語と数学の模擬試験を実施した。模擬試験を受けるのを楽しみにしている人などほとんどいない。この模擬試験を実施するのも実は楽ではない。実施者は、問題の編集・印刷・試験の監督・採点・講評の作成・資料の集計といった時間が結構かかる。おまけに、実施者は休日出勤をしなくてはならない。では、試験を受ける学生達はどうだろうか。日頃の学習成果を試す良いチャンスとはほとんどの人が思っていない。受験などしたくないとも思っている。おまけに、休みの日が何時間もつぶれる。また、多くの人が解けない問題に苦しめられ、しばらくして気分の悪くなる答案の返却を受ける。実施した方でも、たくさんのひどい答案を見せつけられ、がっかりしてしまう。
 こうしてみると、模擬試験というものは、生徒にとっても先生にとっても、喜びを感じることができないものだ。ならば、模擬試験などしない方が良いというのは、極論だ。
 現在、高校1・2年生で愛知高校の特進科に通い、当塾の高等部で指導を受けている生徒は一人もいない。しかし、毎年愛知高校や名古屋高校の特進科の3年生はいる。彼らの話によると、数学のテストはたいてい平均点が20点台だ。では、定期テストにはどんなものが出題されるのだろうか。一応、試験範囲は決められている。しかし、教科書レベルの問題は、ほとんど出ない。教師が印刷したプリント・チャート・大学入試の過去問等が、ほとんどだ。入学早々から、生徒達はこのような問題がテストとして出されるのだ。公立高校の普通科に進学した人達とは、比べようもないほどのものを与えられている。彼らにとっては、部活をしっかり楽しむ余裕はほとんどない。高校側も、公立を凌ぐ大学進学実績を出さなければ生き残れないという理由で、生徒達にはこれでもかという難しい試験問題を出してくる。そして、1年生の頃から模擬試験を受験させられ、自分の実力を定期的に知らされる。
 一方、公立高校の普通科に入学した生徒達のほとんどは部活等に熱中している。定期テスト2週間前位になると試験範囲を勉強しようかなと思うようだ。定期テストは、日頃の学習が定着しているかどうかを試すものが多く、その成績が悪くても、強制補習はない。また、私立高校の特進科の生徒達のように、予備校の模擬試験を定期的に受けることもしない。公立高校(特に名古屋市内にある高校)は、大学の進学実績を良くするために教育しているのではないからだ。  
 中学3年生の時、多くの人達が難関公立高校に進学しました。しかし、入学して以来、自分の実力をつけるために、毎日コツコツ勉強をしていると言えるでしょうか。大部分の人が『ノー』と言わざるを得ません。では、愛知高校等の特進科に進学した人達はどうでしょうか。高校側の願いとは裏腹に、入学者のほとんどが疲れ切っています。中学校時代との差が大き過ぎるからです。また、定期試験の難しさが群を抜いているからです。
 結論として言えることは、模試を通じて自分の実力を把握してほしいのです。公立高校に入学できても、国公立大学に入学できる者はほんの一握りの生徒しかいない現実を早めに知っておいて欲しいのです。せめて、英語と数学の2教科だけは得意科目にしておいて欲しいのです。
敬倫塾塾長 加藤敬志
2008年10月15日号