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敬倫塾からの提言

褒められるほど脳の血流活性化 2008年5月15日号

 自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘教授の研究グループは,人が褒められた時に脳の線条体という部位の血流が活性化することを突き止めた。
 定藤教授は「子育てなどで『褒めると育つ』と言われている。脳神経科学的にも,人にとって『褒められる』ことが,食物などと同じように報酬であるということを明らかにできた」としている。
 24日付の米国脳科学専門誌「ニューロン」に発表した。
 線条体は,脳の中心部にある部位。人間の生存にかかわる食べ物や性的刺激,お金といった「報酬」を得るために行動する際,活発に働くことが知られている。  
 研究グループは「社会性を帯びている報酬の場合,線条体がどう働くか」に注目。平均年齢21才の男女19人に複数の人から「信頼できる」「優しい」など84種類の褒め言葉を示した。  
 さまざまな状況で,脳を特殊な磁気共鳴画像装置で撮影。線条体の血流は褒め言葉の賞賛の度合いが高まるほど増加した。逆に他人が褒められているのを見る状況も設けたが,ほとんど線条体に変化が起きないことなども分かった。
(中日新聞 4月24日 朝刊)
 私達教師は,生徒達にいろんな教科の指導をしている。解法や覚え方を指導するのが仕事であるが,それらを生徒諸君がどのように吸収していってくれるかが重大な関心事である。ただ覚えろだけではなかなか覚えてもらえない。テストをしたり,あててみたりして,いい点をとった時,いい解答ができた時に褒めることにより,この線条体の血流を増加させている。この褒めるという行為は,生徒指導だけに必要なものではない。我々のほとんどが,家族や学校の仲間や職場の仲間をもっている。そういった人たちといい関係を維持することができれば,毎日を楽しく過ごすことができ,勉強や仕事の能率がよくなり,家庭での協力関係もうまくいく。人の良いところをできる限り見つけ,それを褒めることは,社会を明るくする。また,褒められた人は,そのことを原動力として,自分を成長させていく。  
 とは言っても,人の悪いところを見つけることはあっても,なかなか褒めるような良いところは見つからないかも知れない。私は,些細なことでいいから人を褒めたり,ありがとうという感謝の気持ちを素直に出せるように心がけている。こちらが褒めたり,感謝の意を表したことを忘れてしまっていても,何年間たって,「あの時の言葉は嬉しかったですよ」と聞かされると,とても嬉しくなってしまう。お金をかけずに相手にいい気持ちになってもらうことを惜しんではいけないのだと思う。
敬倫塾塾長 加藤敬志
2008年5月15日号