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敬倫塾からの提言

私立中学入試における玉つき現象 2008年2月15日号

 かつて、公立高校入試で「玉つき現象」という言葉が流行した。まずこの現象について若干の説明をしたい。
 公立高校入試では、受験機会が2回ある。最難関の「旭丘−菊里」を例に取ってみよう。  
 旭丘を第1志望、菊里を第2志望としていた人が、旭丘の合格者から洩れたとする。ところが、この人が菊里の合格ラインに入っていたとする。すると、この人は第2志望の菊里に合格することができる。
 つまり旭丘を受験し、不合格となった優秀な人たちが菊里の合格を手に入れる。菊里合格者の何%かは、旭丘を第1志望、菊里を第2志望としていた人で占められることになる。こうなると菊里高校の評価はどんどん上がり、普通なら菊里に合格できそうだと思っていた人が不合格となり、さらには 公立2校落ちという悲しい思いをする者も増える。
 これに似た現象が私立中学入試にもやってきた。
【2008年度 私立中学入試倍率】
東海 南山(女) 淑徳 南山(男) 愛知 名古屋 金城 椙山
2.2 4.8 7.2 4.1 4.1 10.4 5.9 2.6 4.1
 男子校の難関校は、東海・南山男子・名古屋 である。
 女子校の難関校は、南山女子・淑徳 である。
 男女共学の難関校は、滝・愛知 である。
 2〜3年前までは、男子で東海・滝に合格できなかったら公立中学に、女子で南山女子・淑徳に合格できなかったら公立中学に、という人たちがかなりいたと思われる。
 ところが、このような人たちがどっと愛知中学に流れている。「どうしてもここの中学に」というのではなく、「とにかく難関私立中学であれば構わない」という人たちが増加している。
 愛知中学も愛知高校も男女共学という追い風をもらい、いまや信じられない程の高倍率となっている。人気があるだけでなく、東海・滝・南山女子・南山男子の不合格者を多く抱え、レベルは上がる一方になりそうだ。
 玉つき現象の主たる原因は、受験者及び受験指導塾の急増にあるといえる。経済的にゆとりのある家庭が、高額な指導を望むようになり、競争が一層激化していると見るべきであろう。名古屋市の小学6年生の約10%(10人に1人の割合)が私立中学に進学しているようだ。北区は約10%で平均並みだが、中区では22.8%、昭和区では20.6%、千種区では16.2%である。
 塾の受講料は、いまや月額10万円でも驚かない時代になりつつある。「月曜日から土曜日まで毎日4時間以上、日曜日はテストゼミで親子で勉強」という指導が増えてきた。もはや目的のためには手段を選ばず、習い事や趣味も一切ストップ、という人たちの割合が増えてきた。
 現実がこのようになっていることを、私立中学の受験を考える人たちは是非とも知っておいて頂きたい。もはや私立中学入試は「親子で戦う戦争」と言っても決して過言ではないだろう。
敬倫塾塾長 加藤敬志
2008年2月15日号